東京電力福島第一原子力発電所事故により、食品衛生法上の暫定規制値を上回る放射性物質が一部の野菜に検出されたことを受け、風評被害によって出荷停止以外の野菜にも出荷拒否および価格低下などの影響がおよんでいる現状を打開しようと、各地で被災産地の畜農産物に対する応援フェアが実施されている。3件のイベントレポートをまとめた。
被災産地応援フェア
4月13日には、足立区役所の正面広場にて、北足立市場関係業者団体と足立区観光交流協会が主催する「被災産地応援フェア」が開催された。市場の休業日を利用して小売商と市場関係者によってボランティアで運営された午前中(10:00~12:00)のみの短時間開催だ。
販売された福島・茨城・栃木・群馬・千葉県産の野菜や果物の全商品は、各県で放射線測定されたものをさらに都によって検査を行ない暫定規制値の基準値以下であることを確認。会場では東京都の市場衛生検査所による放射線に関する基礎知識のビラも配布して対象商品の安全性をアピールしていた。各テントからは威勢のよい掛け声が飛び交い、開始後30分もたたないうちに完売商品が出る人気ぶりだった。売上げの1割と会場で集めた義援金は、赤十字を通じて被災地に送られることとなっている。
「原発事故で風評被害を受けている農家の方に対して、自分たちができることである“物を売ること”で支援したいと開催しました。商品が安全であるならば適正価格で売ろうと、セリを行なわない農家の方の希望価格である卸値で販売。ただし市場価格ですので、お客さんにとっては、2~3割、通常より安く値ごろ感があります。平日の午前中というと主婦の方は忙しいのではと思ったのですが、マスメディアにも取り上げられ、ここまで反響が大きいとは思いませんでした。準備期間が1週間と短いなかでうまく実現できたのは、場所は足立区に提供していただけるなど、官民一体となってイベント開催にあたったからではないかと思います」(有限会社ベルフーズ代表取締役 鈴木康一氏)。
販売には現地の各県JA担当者も応援に駆け付けたほか、行政では足立区と姉妹提携を結んでいる茨城県鹿沼市の担当者も来訪。新聞・テレビ等マスコミにもいちはやく取り上げられ、後日農水大臣より感謝状が送られたという。今回は1日のみの開催となったが、今後も産地の協力をもとにぜひ続けていきたいとしている。直近では5月29日(日)に荒川区役所前特設会場で開催予定とのことだ。
買い控えを吹き飛ばせ!福島・茨城の農家を応援しよう
いっぽう、4月1日(金)から5月8(日)までの約1ヶ月間で長期間開催されているのが、有楽町駅前の交通会館マルシェで行われている「買い控えを吹き飛ばせ!福島・茨城の農家を応援しよう」だ。都心の歓楽・ビジネス街であることを考慮し、実施時間はお昼から夕方までの6時間となっている(平日/12:00~18:00、土日祝/11:00~17:00)。同マルシェはもともと週末を中心に実施されていたが、本キャンペーンにより福島・茨城両県知事の承認を得て、福島、茨城の畜農産物を中心に平日は5~7軒ほど、土・日・祝日は20~25軒と従来より規模を大幅に拡大しての開催とした。会場では必要に応じて、放射能測定器により自主的に濃度測定しながら活動を行い、収益金の一部は被災地に義援金として募金される。「マルシェを、物を売るだけでなく現地の正確な情報を伝えてもらい、こちら側は応援する相互交流の場としてのインフラとしても使っていただければと考えています。消費者の方からはスーパーより新鮮でよいとの声があるほか、被災地を応援しようという心で熱気があふれていると感じます」(銀座農園株式会社 代表取締役社長 飯村一樹氏)。マルシェを主催する同社では、2009年より毎年、全国の生産者と協力して銀座1丁目の平地で稲作を行なう「銀座でコメづくり2009」を実施。その際に生まれた200軒の提携農家とのネットワークをもとに本イベントは運営されている。長期開催であることをうけてイベントを明るく盛り上げるため、土日には著名人による応援も実施。4月3日(日)には、福島県応援に元プロ野球選手の中畑清さん、自民党の谷垣総裁など。4月10日(日)には、茨城県応援として元プロ野球選手のデーブ大久保さん、芸人のアントキの猪木さん、水戸泉(現錦戸親方)さんなどが応援に駆け付けた。
いわきの農産物は安全!オール日本キャラバン
また、これらの都内の小売商・市場関係者、マルシェの運営等を行なう団体が被災産地を応援しようと声を挙げて実施された上記2件のイベントに対し、被災産地である福島県いわき市が自ら企画して開催されたのが「いわきの農産物は安全!オール日本キャラバン」だ。
いわき市の農産物の風評被害を払拭し、その安全性を市内外に積極的にアピールしようと、『がんばっぺ!いわき』をキャッチフレーズに、4月12日(火)・13日(水)の2日間、同市と「商店街友好都市との交流に関する基本協定」を締結している東京都港区や、ニュー新橋ビル商店連合会の全面的な協力のもと、JR新橋駅前SL広場で実施された。いわき市より出向いたスタッフは総勢15名。また、いわき市出身で首都圏の大学に通う30名の大学生がボランティアが、トマトやいちご、ネギ、キノコ類(菌床しいたけ、ナメコ、エリンギ)等の販売や募金活動を行なった。当日は、枝野官房長官と、しずちゃんにより「がんばっぺ!いわき」の三唱を実施。かつて、いわき市は石炭産業により繁栄していたが、昭和40年、炭鉱の閉山が迫った。そのピンチを救ったのがフラガール。しずちゃんは、その映画「フラガール」に出演した縁で駆けつけた。枝野官房長官はトマトといちご、しずちゃんは、きゅうりの試食も行なって安全性のPRにつとめた。本イベントではそのほか、映画「フラガール」の主題歌を歌った照屋実穂さん、同市出身のお笑い芸人なども応援ゲストとして登場。ニュー新橋ビルには、いわき市東京事務所もあり、そこを通じていわき市とゆかりのある芸能人等への出演が要請された。
「お客さまからは、『応援してます』とか『頑張ってください』など、あたたかいメッセージをいただき、私たちに勇気を与えていただきました。イベント実施後は、HPをもっている生産者の方へのメッセージや商品の注文が増えています。今回の東京でのイベントを契機として、都内を中心にいくつかオファーがきていまして、現在、新たなイベントを検討しているところです」(いわき市役所 農林水産部 農業振興課 園芸振興係長 荒木 学氏)。
(2011年4月17日(日)信藤 理保子)
各地の応援イベント
このほかにもさまざまな取り組みが行なわれているほか、実現には至らないまでも、被災地の生産者に対し、各地から多くの声がかかっているとのこと。上記で紹介した事例も含めた各取り組みの概要を以下に紹介する。
■買い控えを吹き飛ばせ!福島・茨城の農家を応援しよう
http://kotsukaikan-marche.jp/pdf/release_110331.pdf
会期:2011/4/1~2011/5/8
会場:交通会館マルシェ
主催:銀座農園株式会社
■「がんばっぺ!いわき」いわきの農産物は安全!オール日本キャラバン
http://www.city.iwaki.fukushima.jp/topics/011101.html
会場:JR新橋駅前SL広場および新橋サテライト新橋2階
会期:2011/4/11・2011/4/13
主催:いわき市
■被災産地応援フェア
http://www.metro.tokyo.jp/INET/EVENT/2011/04/21l47200.htm
会場:足立区役所の正面広場
会期:2011/4/13
主催:北足立市場関係業者団体、足立区観光交流協会
■JTB直売会「がんばっぺ!福島」風評被害を吹き飛ばせ!!~福島・東北とつながって~
http://www.city.iwaki.fukushima.jp/sangyo/nousuisan/011223.html
会場:東京モノレール天王洲アイル駅、トラベルゲート有楽町支店、JALプラザ有楽町前
会期:2011/4/27・2011/4/28
主催:JTB「がんばっぺ!福島」応援隊
■ひとつになろう日本「One Love Life Live」~今、一人一人ができる事~
http://www.city.iwaki.fukushima.jp/sangyo/nousuisan/011223.html
会場:フジテレビ本社屋1階広場
会期:2011/5/3~2011/5/5
主催:株式会社フジテレビジョン
■応援産直市ー料理人が応援団!-
http://www.jreast.co.jp/press/2011/20110413.pdf
会場:上野駅、秋葉原駅、大宮駅
会期:2011/5/3~2011/5/7
主催:東日本旅客鉄道株式会社
■がんばろう ふくしま!運動 首都圏スタートイベント
会場:メトロプラタンプラザビル(JR池袋駅直結)
会期:2011/5/13~2011/5/15
主催:福島県
■『買って食べて、応援しよう!in築地』-被災地支援・風評被害撲滅フェア-
会場:東京都中央卸売市場築地市場内
会期:2011/5/22
主催:社団法人 築地市場協会
■被災産地応援フェアー
http://www.shijou.metro.tokyo.jp/press/23/5_10.html
会場:荒川区役所前特設会場
会期:2011/5/29 午前10時開始