2012年、東京マラソンのチャリティーランナー制度が本格始動
わずか5回の開催ながら、すでに日本におけるシティマラソン代名詞的存在となった東京マラソン。その規模もさることながら、毎回様々な新しい施策が行なわれ、参加型スポーツイベントのよきモデルケースとしても知られている。
7月6日(水)、都内にて発表されたチャリティランナー募集についても、これまでになかった取り組みだ。
厳密にいえば、前回も行なわれたこのチャリティランナー制度。ただ、実施が急遽決まったため、募集開始から締め切りまで時間がなく、用意された枠を埋めることができなかった(それでも1,000人の枠に対して約700人が参加)。今回は7月15日(金)より募集を始め、11月いっぱいまでが締め切りとなっている。枠も3,000人にとなったということで、本格的な試みとしては今回が最初といっていいだろう。
それではこのチャリティランナー制度とはどういうものなのか。まずは参加資格。東京マラソンへの通常エントリーの場合は10,000円だが、チャリティランはマラソンへの参加費の他に100,000円以上寄付をした人が対象となる(先着順)。参加はフルマラソンのみで、ランナーはおそろいのTシャツを着て走る(強制ではない)。このTシャツの背中の部分は空白になっており、ランナーそれぞれが自分でスローガンやメッセージを書けるようになっている。これを着て走ることで、チャリティの趣旨のアピールにつながるというわけだ。
枠がすべて埋まれば3億円が集まる計算となるこの取り組み。寄付金の分配についてはどうなるのだろうか。
まず集まった金額の50%は東日本大震災の支援団体に寄付される。あとの50%は、タイトルのとおり「つなぐ」を共通テーマとした各分野のチャリティ活動に充てるとのこと(表組参照)。一括してどこかの団体に寄付するのではなく、ある程度細分化をしてそれを公表すれば、寄付をした側も寄付金がどのようなところに行くのか明確にイメージできる。昨年はこの寄付先が4か所だったが、今年は「『暮らし』をつなぐ」が追加されて5か所となった。
5つのテーマ別チャリティ活動
テーマ | 目的 | 協力団体 |
「家族」をつなぐ | 病気の子どもと家族を支援 | 認定NPO法人ファミリーハウス |
公益財団法人そらぷちキッズキャンプ | ||
「未来」をつなぐ | 環境問題を支援 | 公益財団法人山梨県緑化推進機構 |
公益財団法人東京都農林水産振興財団 | ||
「命」をつなぐ | 途上国の命の問題を支援 | 認定NPO法人国連UNHCR協会 |
公益財団法人プラン・ジャパン | ||
「夢」をつなぐ | アスリートを支援 | 財団法人日本障害者スポーツ協会 |
認定NPO法人スペシャルオリンピックス日本 | ||
「暮らし」をつなぐ | 暮らしの安全を支援 | 財団法人東京交通安全協会 |
公益財団法人東京防災救急協会 |
スポンサーにはゼビオグループが決定
仮に3億円もの金額が集まった場合、事務手続きにまつわる経費の問題が出てくる。全体の15%はかかるといわれており、その分をどうするかというのを検討した結果、このたび、傘下にスポーツ店を数多く持ち、本社を福島県に置くゼビオグループがオフィシャルチャリティスポンサーに決定。かかる経費の分を負担すると同時に、財団とともにチャリティランナー募集のためのPR活動や窓口になることも発表された。レースそのものではなく、チャリティランにスポンサーがつくというのも画期的な取り組みではないだろうか。
さて、こうしたスポーツイベントを通じた寄付、しかも一口100,000円という金額に違和感をおぼえる人も少なくないかもしれない。しかし、諸外国のシティマラソンでは、すでにこのチャリティランナー制度はすっかり定着をし、大きな効果を上げている。例えばロンドンマラソンでは1981年にこの制度がスタート。2009年には4,720万ポンド(約60億円)を集めた実績があり、ギネス記録にもなっている。全ランナーの4分の3がチャリティ目的で走るそうだ。シカゴマラソンは2001年にチャリティ制度を始め、2009年には1,000万ドルを集めた。ニューヨークシティマラソン、ボストンマラソンなども同様に多額の寄付金を集めている。東京マラソンも、この制度が定着をすれば今後チャリティ枠がどんどん増えていくかもしれない。
世界からも注視された東日本大震災は、各分野において、日ごろの活動の社会的な意義というものをあらためて考えさせる契機となった。もちろんイベントも同様。日本最大のシティマラソンが行なうこうした取り組みが、他のイベントにも大きく影響するのは必至だ。
(鈴木隆文)
一般財団法人東京マラソン財団
http://www.tokyo42195.org/tmf.html
ゼビオ(株)
http://www1.xebio.co.jp/