一般社団法人“しぶやコンシェルジュ”(通称しぶコン)が行なう観光街づくり。渋谷の街の奥深さをもっともっと知ってもらいたいと、2011年6月25日に行なわれたガイドツアーはすでに第3回目となった。
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しぶコンではさらに、渋谷の名所がひと目でわかるしぶコンのマップも発行している(1万部)。A2判で、表面は、渋谷駅から半径700〜800mの範囲で、主な商業都市を一覧にした。裏面は、「アート」「建築」「記憶」の三分野において、それぞれ2時間で歩けるコースを紹介。渋谷の空気を肌で感じられる地元目線なスポット紹介もしぶコンならでは。現在、西武渋谷店A・B館案内カウンター、渋谷中央図書館および区内図書館、渋谷駅前交番に設置されている。
前回に引き続き、しぶコン代表・玉井美歌男氏に話を伺う。
インタビュー
- お創りになった渋谷コンシェルジェならではの“渋谷マップ”の特徴、魅力はどんなところですか?
渋谷の“観光用マップづくり”を目指しました。道路や路地・小路、ランドマークの建築物など、街の手掛かりとなるものは精緻に表現しました。その他の情報は、しぶコンのメンバーが街を歩いて収集したものを、独自のフィルターを通し、お客様の目線に立って、利用しやすいようにという制作意図を貫いたものに仕上がっています。
ハチ公像から、半径約800m圏内にスポットを当て、商業地として最も密度の高いエリア専用のマップです。これは、しぶコンが、渋谷の街で、初めて着眼した試みだと思います。
- 具体的な特徴は?
渋谷は武蔵野台地の端に当たります。地形が台地と谷からなり、それを繋ぐ坂道で構成されています。台地や尾根から、かつて渋谷の“谷”に向かって水が流れ、その多くの跡が道となっているのです。そのために渋谷の街(ダウンタウン)の幹線道路は、渋谷駅から、放射状に、四方に広がっています。これらの幹線道路を横に繋ぐ小さな道が無数にあります。この自然の地形遺産が、実は道をわかりにくくしています。
そこで、しぶコンのマップでは、オレンジの色彩を用いて、この道をできるだけ見やすくするデザイン的な工夫を施しています。また、幹線道路には全て道名・或いは愛称名がありますので、それを路上に表示しました。あとは、小さな道もできる限り忠実に入れたことです。国際観光都市としてのおもてなしを大切にし、4カ国語(日英中韓)を併記し、更には、3・11に学び、帰宅困難者受け入れ施設も示しました。これは、駅周辺の混雑緩和にも役立つものと考えました。
- 将来的には地域活動として定着させ、雇用の創出も考えていらっしゃるとのことですが、今後は渋谷コンシェルジュ、およびガイドツアーをどんなふうにしていきたいですか?
渋谷の街の案内人として、幅広く“コンシェルジュ”の役割を果たし、ファッションの街のガイドらしく明るく楽しく、ファッショナブルで洗練されたガイドの育成をしていきたいと思っています。ガイドコンテストを実施するのもいいですね。そこから“カリスマガイド”が生まれたりして、そんな発展も渋谷らしいでしょう。若い方もガイドとして働いていただけるように、事業としても成長させたいと思います。
旅行代理店などとのタイアップによるツアーへの集客も考えられます。既にそういうお話をいただいておりますので、新しいモデルができると思います。ポジティブにできることはチャレンジしていきます。
それと、渋谷の街はステージ性が高いので、露出することで参加する人もそれを見る人も楽しめるような、渋谷ならではのイベントをやりたいですね。今、来春に向けて、温めている企画があります。おもてなしでブランド化を目指す、イメージ戦略の“のろし”になるといいと思っています。
今後、街の様子など気づいたことを分析し、地域の商店街の皆さんとの融合を図りながら、行政に対しても、街のおもてなしに留意した提案などもできるのではないかと思っています。
- おもてなしって、日本人らしくていい響きですね。合理化、スピード重視、大量生産が激しい現代でも、次世代に引き継ぐものとして、忘れずに残していきたいひとつだと感じます。最先端の渋谷の街で、日本人ならではの最上級のおもてなしが受けられたら、日本人はもとより、諸外国の方々も喜ぶでしょうね。渋谷とともに生きてきた、渋谷を肌で知る玉井さんたちだからこそ、なせる技なのかもしれません。ぜひともそんなすてきな国際都市としての礎を築いていってほしいです。このたびは取材ご協力、どうもありがとうございました。
インタビュー協力:しぶやコンシェルジュの会 代表 玉井 美歌男 氏
(2011年8月26日 小松静)