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【インタビュー】東京ミッドタウンマネジメント広報・金子智美氏に聞く ―都心のオアシス 芝生広場を使った多彩なイベント展開について―

2007年に開業し、すぐに六本木の名所のひとつとなった東京ミッドタウン。隣接する港区立檜町公園を含め、約10ヘクタールの広大な敷地には、商業施設、オフィス、住宅、ホテル、美術館などが入っているが、単なる建物の集合体ではなく、ひとつの“街”であるということを施設側は常に発信している。

そんな東京ミッドタウンの大きな特徴のひとつとして芝生広場の存在があげられる。隣接する公園と合わせると、都心での複合施設としては異例と言っていいほど緑に覆われている。東京ミッドタウン内の建物を通って、あるいは大通りから遊歩道を通ってこの芝生広場に到着すると目に飛び込んでくる美しい緑と、広々とした空間。「都心にも緑を」と、昨今様々な商業施設が芝生や木々をレイアウトに取り入れているが、これだけまとまった面積のグリーンで解放感まで感じさせてくれるのは東京ミッドタウンの芝生広場だけだ。

さらに、この芝生広場は人々が自由に入ってくつろげるという点にも特徴がある。年間を通じて行なわれている大小様々なイベントでも、重要な“舞台”として芝生広場は使われてきた。例えばその上でヨガやスポーツ、クラフトなどのワークショップを行なったり、イルミネーションやキャンドルナイトの舞台としたり、青空の下での読書を楽しんでもらうためにレジャーシートや様々なジャンルの書籍を無料で貸し出したり、さらにスケートリンクに変身させたり…。逆に言えば、自主企画で行なうイベントで、芝生広場を使わないものはほとんどないほど重要な位置を占めている。

東京ミッドタウンの“顔”でもあるこの芝生広場を、施設側としてはどのようにとらえているのか。東京ミッドタウンマネジメント(株)の広報担当、金子智美氏に話しをきいた。

 

開発面積の40%が緑地。その中心が芝生広場

―― 開業されて4年半。今や東京ミッドタウンといえば芝生広場というイメージをお持ちの方も多いと思います。そもそもこれだけの緑を取り入れることになったのはどういう経緯からだったのでしょうか。

金子 建物を含めた東京ミッドタウン全体のコンセプトは「Diversity on the Green」でした。日本の素晴らしい価値を世界に発信する「ジャパンバリュー」。日本の伝統を建築に取り入れるというねらいから、「枯山水」がモチーフとなりました。敷地内にあるいくつかの建物を「石」に見立てています。

そんな中、芝生広場を中心とした緑地は、1年中緑が絶えない街にしようということで現在のかたちになりました。

隣接する港区立檜町公園と合わせると開発面積が約10ヘクタールあるのですが、そのうち約4ヘクタールが緑地と公園になります。公園は港区立ですから区のものですが、開かれた街を目指して、公園と東京ミッドタウンの境界線はあえてはっきりさせず、連続性を重視しています。

―― もともとここは防衛庁の建物でした。

金子 はい、そのときは敷地を壁が覆っていて、一般には閉ざされた空間でした。再開発にあたり、人々が憩える開かれた街にしたいという思いから、外との区別は明確につけませんでした。

 

イベント企画にあたって重視することとは

―― さて、年間を通じて様々なイベントが行なわれるなか、芝生広場は必ず使われる場所になっていますし、その内容も4年半の間でかなり幅広くなってきたと感じます。おそらく外部からの提案もかなり多いのではないでしょうか。実際企画が実現するにあたっての振り分けの基準のようなものはありますか。

金子 おっしゃるとおりで、非常に多くのご提案を頂戴していますが、いくつか制限があります。

実は東京ミッドタウンを開発するにあたり、緑地の一帯が公開空地に指定されました。公開空地に指定されたことで一般に開放され、歩行者が自由に通行、利用できるようにすることや、周辺環境の向上に努めることが条件となりましたが、その分高層の建物の高さ制限や容積率割増しの緩和を受けています。また、東京都の「しゃれ街条例」(※)に沿うかたちでもイベント内容を考えていますから、イベントならなんでもできるというわけではありません。

これらの観点から言えば一番大きな基準は、公開性のあるもの。クローズドなイベントではないということが条件となってきます。例えば何かの展示会を開催するにしても、関係者向けなど限られた人しか参加できないものではなく、誰もが見られるものではないと開催できません。それと社会的意義があるものという条件も、条例の中に含まれています。公開性と社会的意義。この2つを重視しながら、弊社の担当者が東京都と相談をしながら計画を進めます。

―― 東京ミッドタウンとしても何か基準はありますか。

金子 やはり非常に開放的な空間ですし、東京ミッドタウンの顔とも言える場所ですから、お客様にいかに気持ちよく楽しんでいただけるか、東京ミッドタウンの街のイメージと合っているかという観点からご相談させていただいております。

※しゃれ街条例=
正式名称は「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」。個性豊かで魅力のあるしゃれた街並みづくりを進め、東京の魅力の向上に資するための制度。以下の3つが整備され、身近な都市再生を強力に推進することが可能となった。2003年に施行。
①都市計画に基づく規制緩和などを活用しながら共同建替等を促進する「街区再編まちづくり制度」
②地域の協議会が中心となって取り組む一体性のある街並み景観づくり活動を支援する「街並み景観づくり制度」
③地域の特性を活かし魅力を高めるまちづくり活動を行う団体を登録し、活動の促進を図る「まちづくり団体の登録制度」

ゴルフの全英オープンが行なわれた名門コースと同様の芝を使用

―― 続いてメンテナンスについておうかがいします。これだけ自由に人が入っていい状態で1年中きれいな芝にしておくにはかなり苦労される面があるのでは。

金子 メンテナンスをご担当いただいている会社の方にうかがいますと、開業以来、かなりの試行錯誤があったと聞いています。何十とある芝の種類のなかで、人が踏むことに耐えられるものというのはそれほど多くはないそうです。また、日本の場合は四季がはっきりしていますので、夏と冬では違う芝にしなければなりません。特に冬の一番過酷な時期に、場所によってはゴルフの全英オープンの開催実績がある名門コースと同じ芝で対応していたりと、かなりの労力とコストがかかっています。

イベントとイベントの間、養生のために一時立ち入りをご遠慮いただくこともありますが、開業当初に比べるとその期間は短くなっているようです。

―― 夏のイベントでは大量の水がまかれて、その上を子供たちが走り回っていました。非常に楽しそうな光景だったと同時に芝にはダメージが大きかったのではないですか。

確かにそうでしたが、芝生広場は憩いの場、楽しんでもらう場として考えていますから、うまくメンテナンスをしながらできるだけ目にも楽しく、思い切り遊んでもらう場として認知してもらえればと思います。

―― もともとここは防衛庁の建物でした。

金子 はい、そのときは敷地を壁が覆っていて、一般には閉ざされた空間でした。再開発にあたり、人々が憩える開かれた街にしたいという思いから、外との区別は明確につけませんでした。

 

冬に向けて芝生広場を使ったイベントが目白押し

―― さて、秋から冬にかけても芝生広場でのイベントが続きます。

金子 「パーク ヨガ」が非常に好評なので、9・10月に実施しました。続いて多摩大学の学生が企画・運営する、東日本大震災の被災者を応援する和紙キャンドルのイベントを行ない、続いて毎年恒例の「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」。そして、クリスマスのイルミネーションへという流れになります。

―― 今年のイルミネーションは例年以上の迫力だということですが。

金子 今年は5回目ということで、集大成的なものを考えていました。「スターライトガーデン」と名づけられた東京ミッドタウンのイルミネーションの最大の特徴というのは、芝生広場がひとつのスクリーンになっていて、そこでアニメーション的に次々と変わるイルミネーションを楽しんでもらえるという点でしょう。スタートした2007年から今年の演出までが目まぐるしく変わっていくというもので、例年以上に楽しんでいただけるものになりました。また、日程も前期(11/15~12/4)と後期(12/5~12/25)に分かれており、後期はまた違う演出のものをお見せします。例年でも、クリスマスイブ、あるいはクリスマス当日は行列が館内まで続く状態になりますが、今年は12月23日が金曜日ですので3連休となって、例年以上のにぎわいになるでしょう。1人でも多くのお客様にイルミネーションを楽しんでいただければうれしく思います。


まとめ

現在東京ミッドタウンがある場所は、以前防衛庁があったことを記憶している方も多いだろう。さらにさかのぼるとその前はGHQが使っており、その前は旧陸軍、その前は長州藩毛利家の下屋敷となっていた。つまり、誰もが自由にこの場所に出入りできるようになったのは、長い歴史の中で東京ミッドタウンが開業してからということになる。

今や国内のみならず、外国からの来訪も多く、様々な人が行き交う“街”としての東京ミッドタウンにとって、緑豊かな芝生広場の存在はなくてはならないものとなっている。

外苑東通り側からのビルが立ち並ぶいかにも都会的なたたずまいと、その奥に広がる芝生広場のコントラスト。この魅力をどう活かしてイベントを行なうかはまさに企画する側にとって腕の見せ所となるが、それゆえか、イベント内容の幅は年々広くなっているように感じられる。それにつれて、比較的弱かった小さい子供を含むファミリー層の来街も増えたのではないだろうか。

とはいえ、この芝生広場の存在を知らない人もまだまだ多いとのこと。少々意外に感じたが、大通り側からだと見えない場所にあるということが大きな理由のようだ。そうした人々に買い物や飲食だけでなく施設内を回遊してもらい、芝生広場の魅力を知ってもらうのに、イベントという手段は有効だ。六本木の喧騒から少し離れ、静かでゆったりとした時間が過ごせるのは芝生広場を中心とした緑地があればこそ。今後もその魅力の発信が大いに期待される。

(鈴木隆文)

 

東京ミッドタウンマネジメント株式会社

【インタビュー】東京ミッドタウンマネジメント広報・金子智美氏に聞く ―都心のオアシス 芝生広場を使った多彩なイベント展開について―東京ミッドタウンのマネジメントを行なうため、2004年に設立された三井不動産(株)100%出資の子会社。東京ミッドタウンのイベントやプロモーション、商業施設の販促企画などのタウンマネジメント業務、建物の施設管理を中心としたプロパティマネジメント業務など、東京ミッドタウンの運営・管理業務全般を行っている。

三井不動産のサイト → http://www.mitsuifudosan.co.jp/project/tokyo_midtown/
東京ミッドタウン公式サイト → http://www.tokyo-midtown.com/

 

MIDTOWN CHRISTMAS 2011

【インタビュー】東京ミッドタウンマネジメント広報・金子智美氏に聞く ―都心のオアシス 芝生広場を使った多彩なイベント展開について― 東京ミッドタウンの冬の風物詩。特に芝生広場を使って展開するイルミネーション「スターライトガーデン」は毎年非常に多くの人が訪れることで知られ、過去4回で2千万人以上を動員した。5回目となる今年は開催期間を前期と後期にわけ、それぞれ異なるイルミネーションを実施。前半は、過去4年分+今年の「スターライトガーデン」の演出を順番に見せていく集大成的な作品。後半は地球誕生の歴史をイルミネーションで表現するという壮大な演出を予定している。

イベントサイト → http://www.tokyo-midtown.com/jp/xmas/2011/index.html



芝生広場を使った2011年の主なイベント事例

シティ アイスリンク in 東京ミッドタウン

2011年1月 6日(金)~2月28日(月)
芝生広場に本物のスケートリンクが登場。2009年より続く3回目の企画であり、屋外としては都内最大級のリンクとして話題を呼んだ。開放的な空間で滑ることができる点が大変好評で、昼は親子連れ、夜はカップルが数多く訪れた。オープニングイベントにはトリノ五輪金メダリストの荒川静香さん、バンクーバー五輪金メダリストのエヴァン・ライサチェク選手(アメリカ)がゲストとして登場し、デモンストレーションと子供向けのスケート教室を開催した。

 

OPEN THE PARK

2011年4月22日(金)~5月 8日(日)
GW恒例企画。イベントタイトルのとおり、芝生広場をメイン会場とした自主企画で、屋外でドリンクやフードが楽しめる「HAKUSHU MIDPARK CAFE」、全国の特産品(今年は特に被災地からの出展が注目を集めた)を扱った「MID-MARKET」、読書をしながらゆったりとした時間を過ごしてもらおうという「PARK LIBRARY」、ヨガ、ミニライブなどが行なわれた。

 

MIDTOWN ❤SUMMER 2011

2011年7月16日(土)~8月28日(日)
夏休み時期に毎年行なわれている自主企画。今年、芝生広場を使ったコンテンツとしては、水を大量に打ち上げ、そこにレーザー光線を当てて幻想的な空間を作り出す「MIDTOWN RAINBOW」が目玉。上空から落ちてくる水をシャワーのように浴びる人も多かった。また昼間も、レーザー光線こそないものの、定期的に水やミストを噴射させ、まるで山中にいるかのように芝生広場が霧に覆われ、周囲も非常に涼しくなった。隣接する「ミッドタウン・ガーデン」では、「BACARDI MIDPARK CAFE」が登場。風通しのいい空間で飲食が楽しめるようになっていた。

 

Midtown Relax Park

2011年9月 2日(金)~10月 2日(日)
このイベントも、芝生広場がメイン会場。リラックスをテーマに、屋外用のゆったりと過ごせるイスやハンモックを芝生広場に並べて、誰もがくつろげる空間を提供した。また、9日間にわたって、春に続く「パーク ヨガ」を開催。このときは朝のみならず「月見ヨガ」と題して夜間も実施。多くの愛好家が訪れた。夏のイベントと同様、隣接する「ミッドタウン・ガーデン」に「HAKUSHU MIDPARK CAFE」も展開した。

 

和紙キャンドルガーデン

2011年10月15日(土)~10月16日(日)
多摩大学の「村山貞幸ゼミ」の学生が企画・運営をする企画。日本の伝統文化を研究、伝承する活動を行なっている同ゼミが、東日本大震災の被災者に向けた応援メッセージを募集。それを和紙で作ったキャンドルにして芝生広場で点灯しようというもの。メッセージは国内のみならず、海外(67か国)からも寄せられた。

 

Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2011

2011年10月28日(金)~11月6日(日)
「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに2007年から開催しているイベント。会期中は様々な企画が実施されるが、なかでも注目は「DESIGN TOUCH Park」。芝生広場に約50メートルのテーブルを製作。訪れた人が誰でも参加できるワークショップを実施した。本イベントのシンボルとなる作品をみんなで協力しながら作るワークショップも開催された。企画・運営はKMD(慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科)と、NPO法人CANVAS。会場全体のデザインはトラフ建築設計事務所が担当。

 

過去のイベントの模様