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地元の心を一つに復興への第一歩、石巻市で「サン・ファン・バウティスタ出帆記念イベント~乗り越えよう!共に~」開催

地元の心を一つに復興への第一歩、石巻市で「サン・ファン・バウティスタ出帆記念イベント~乗り越えよう!共に~」開催

津波に耐えた「サン・ファン・バウティスタ」。現在、内部の見学はできないが、展望台から見ることは可能。“復興のシンボル”を多くの人が眺めていた

今から約400年前、伊達政宗の命により宮城県石巻市からヨーロッパへ向けて出航した「慶長遣欧使節」。一行を乗せ、太平洋を往復した木造洋式帆船「サン・ファン・バウティスタ」を復元・展示し、使節の歴史や大航海時代の帆船文化などを学べる「宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)」(石巻市渡波地区)で10月29日、「サン・ファン・バウティスタ出帆記念イベント~乗り越えよう!共に~」が開催された。

 

現在、同館は東日本大震災を受け休館中だが、今年2011年は使節が派遣されるきっかけとなった「伊達政宗とスペイン大使ビスカイノの出会い」からちょうど400年目にあたるとし、これを記念して使節の出航日(10月28日)に合わせてイベントを企画。ミュージアムと地元住民などから組織する実行委員会で主催した。

イベントは、「サン・ファン復興祭り」、「スペイン友好400周年記念植樹」、「使節の足跡を辿る写真展」の3つの柱で構成され、約2,700人に上る来場者で終日賑わった。それぞれの内容は下記の通り。

 

1.第85回サン・ファン感謝デー「サン・ファン復興祭り」

震災前に同館で定期的に開催していたイベント「サン・ファン感謝デー」を復活させたもので、伊達のうどん無料試食や野菜の無料配布、魚介類などを販売。全部で11店が出店し、午前10時の開場と共に多くの人が列をなした。

野外ステージでは、“追っかけ”もいるというほどの人気を博す「仙台・奥州おもてなし集団伊達武将隊」などが登場。大震災という大きな試練を「共に乗り越えよう」と力強いメッセージを送ると、来場者から大きな拍手が挙がった。

 

2.スペイン友好400周年記念植樹

両国の400年に渡る友好を記念し、宮城スペイン協会と共催で「しだれ桜」を植樹。同協会は過去にスペインに桜を植樹しており、今回は両国の縁の始まりともいえる石巻に、復興の願いを込めて同じ桜を植樹した。

 

3.寄贈写真展「ローマへの遠い旅~慶長使節支倉常長の足跡~」

世界で初めて使節の足跡を辿ったという写真家・高橋由貴彦氏(石巻市出身)の寄贈写真展を開催。スペインを中心に撮影された作品32点が展示された。入場は無料。

 

このほかにも、館内に設置されたスクリーンで、職員が撮影した大津波襲来時の映像を公開。近くの漁船が流される中、ミュージアム内に係留された使節の復元船「サン・ファン・バウティスタ」が奇跡的に津波に耐えた様子などが映し出され、来場者は画面に見入っていた。

震災後初となった今回のイベント。当初、館側は開催に不安やためらいがあったという。しかし、「地域の皆さんの強力な働きかけで、“ぜひ、やっぺし!”となり、実現に至った」(公益財団法人慶長遣欧使節船協会専務理事 サン・ファン館 館長 濱田直嗣氏)

大変な時だからこそ、地域の歴史や文化は心の拠り所になる。そこに注目し、住民が一体となって開催にこぎつけたということだろう。その甲斐あって当日は予想を上回る来場者数となり、同館で震災前に定期的に行っていたイベントの2~3倍もの人が訪れたそうだ。当日の運営には、ボランティアスタッフとして愛知県の大学生や高校生ら約35人も駆け付けた。

「被災者とミュージアムが手を取り合い、自ら立ち上がる姿が伝わった結果、支援の輪が広がり、多くの方に来て頂けたのだと思う。また、ミュージアムの一日も早い再開を待ち望む声もあり、当館の今後の在り方や役割を再確認するきっかけにもなった」(同館 企画広報課 高橋正法氏)

今後のイベント開催は未定だが、2013年には「慶長使節400年記念事業」を予定している。それに向けて「地域や博物館の復興と共に、PRを兼ねた企画を可能な限り実施していきたい」(高橋氏)という。

「慶長遣欧使節」は、その関係資料(仙台市博物館所蔵)が国宝に指定されている。ユネスコ世界記憶遺産への推薦も決まり、これからますます注目を集めるだろう。そんな中で開催された今回のイベントは、復興へ向けての大きな一歩となったのではないだろうか。

(2011年10月29日(土)池田朋子)

 

開催概要&実施データ
名称 サン・ファン・バウティスタ出帆記念イベント~乗り越えよう!共に~
会期 2011年10月29日(土)
会場 宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)/ サン・ファンパーク
開催地 宮城県石巻市渡波(わたのは)地区
主催 公益財団法人慶長遣欧使節船協会 / サン・ファン感謝デー実行委員会
協力 JAいしのまき(サン・ファン感謝デー)
共催 宮城スペイン協会
後援 宮城県・石巻市・三陸河北新報社・石巻日日新聞社・㈳石巻観光協会・ラジオ石巻
入場料 無料
ターゲット 広く一般
告知宣伝方法 ・ミュージアムの公式HPでの告知
・石巻市内を中心にポスター100枚
・チラシ1,000枚程度配布
・テレビ(仙台駅前生出演PR、NHK情報番組への出演)、ラジオ
・新聞記事での紹介
制作印刷物 ポスター、チラシ
物販コーナー 露店(焼きそば・たこ焼き・玩具等)8店、JAいしのまき1店、あさり格安販売1店、鮮魚格安販売1店
スタッフ数 ミュージアム職員(7名)、実行委員会(約15名)、愛知県大学生・高校生ボランティア(約35名)、その他(元職員など約6名)
ステージイベント出演者 仙台藩志会、仙台・奥州おもてなし集団伊達武将隊、渡波獅子風流塾、唱友会、木原たけし他
会場面積 13,495㎡
動員数 約2,700人
開催日数 1日間
URL http://www.santjuan.or.jp/event.html
問い合わせ

公益財団法人慶長遣欧使節船協会 TEL:0225-24-2210