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コラム・特集

イベント同士の連携で、東京をアジアの“クリエイティブハブ”に 「CREATIVE TOKYO」

東京ブランドの再構築へ

イベント同士の連携で、東京をアジアの“クリエイティブハブ”に 「CREATIVE TOKYO」

昨年11月の「CREATIVE TOKYO フォーラム」にて開幕挨拶をする福原義春氏((株)資生堂名誉会長)

経済産業省では、2011年5月の「クール・ジャパン官民有識者会議」において提言された「クリエイティブ・ハブの構築」にむけて、各自治体や関係各省と連携し、地域資源や観光資源を活かしたクリエイティブ産業の振興により日本全体を活性化する取り組みを進めてきた。

こうした取り組みの一環として、日本のクリエイティブ産業のショーケースである東京において、産業界や関係各省、大学等が一体となり、街ぐるみで東京のブランドを再生し、日本各地の活性化につなげるべく「CREATIVE TOKYO」構想を推進。2011年の秋に本格始動をし、まずは同年11月の「東京デザイナーズウィーク」内において、各界の識者を集めた「CREATIVE TOKYOフォーラム」を開催。枝野幸男経産相が東京をアジアのクリエイティブ・ハブとする「CREATIVE TOKYO」宣言を発表したこともあって、デザイン業界関係者はもとより、一般メディアにも注目され、多くの人の目にとまることとなった。

「東京都や関係省庁、商店街、ビジネスの現場にいる百貨店やデベロッパー、イベントの主催者、NPOなどと連携をして活性化させようという取り組みです。広報の連携を図ったり、イベント同士で連携をすることでイベントと街が一体となり、それが活性化につながって、最終的には観光客誘致などに結び付けばと考えています」(経済産業省商務政策局クリエイティブ産業課長 渡辺哲也氏)

とのことで、ジャンルの垣根を越え、様々な取り組み同士が連携しながら情報発信力を高めようという試み。その先には、東京以外からもどんどん客を呼び込み、活性化させようというねらいがある。もちろんこの東京以外という部分には外国も強く意識しているのは言うまでもない。

既存・新規イベントで春と秋に集中プロモーション

イベント同士の連携で、東京をアジアの“クリエイティブハブ”に 「CREATIVE TOKYO」

「CREATIVE TOKYO」のロゴをデザインした、クリエイティブ・ディレクターの伊藤直樹氏

さて、いくつか柱があるのなかで、イベント業界として注視したいのはやはり「TOKYO AUTUMN」「TOKYO SPRING」ではないだろうか。これは、「CREATIVE TOKYO」がひとつのプラットフォームとなり、横の連携をより強くしようというもので、春と秋に目玉イベントが集中することから、この2つの機会をターゲットとした。

2011年秋の「TOKYO AUTUMN」は、立ち上げから間がなかったせいか、具体的な連携のかたちはさほど見えてこなかったが、これから始まる「SPRING」については目に見えるかたちでのアクションが期待できそうだ。そのひとつが「TOKYO PREMIUM Project」。これは、「ジャパン・レストラン・ウィーク2012」「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/W」「アートフェア東京2012」という、異なるジャンルの3イベントが持つそれぞれのコンテンツを互いに融合させるというもの。「食」代表、「ファッション」代表、「アート」代表が手を取り合うことで、これまでにない“化学反応”を起こそうという思惑があるようだ。

公式サイト(TOKYO AUTUMNTOKYO SPRING)をご覧いただければわかるとおり、これら以外にも実に様々なジャンルのイベントが名を連ね、情報を発信していく。

2月の記者発表会で強調されていたのは「海外」というキーワードだった。震災のせいばかりではなく、その前からどのジャンルも下向きになっている日本。かつて得意としていた自動車産業やエレクトロニクス産業といった“ハード”が頭打ちとなった現実の前で、“ソフト”をどう売りこむのかというのはこれまで以上に重要となるのは誰しもが思うところだが、個々の企画や組織がやれることに限界があるのも事実。

この「CREATIVE TOKYO」のような場があれば、志しを同じくする者同士が土俵を越えて活動しやすくなる。また、海外からの来場促進を意識することで、イベント作りに新たな風が吹き込まれることだろう。連携することでどのようなものが産まれ、育っていくのか。まずは春の東京に注目だ。

(鈴木隆文)

CREATIVE TOKYOの主な取り組み

CREATIVE TOKYO フォーラム~Designing New Futures~

クリエイティブ産業関係者の意見交換の場をめざす「CREATIVE TOKYO フォーラム」。国内外のクリエイティブ関係者が、各産業の持つこれからの可能性や、日本社会の復興と再生について意見を交わしていく。2011年11月には「東京デザイナーズウィーク」内において、クリエイティブが社会にどう貢献できるかという視点で3部構成のフォーラムを開催。閉幕時には、枝野幸男経産相が「CREATIVE TOKYO」宣言を発表し、注目を集めた。

●第1部「新しい日本の創造」

開幕挨拶:福原義春((株)資生堂名誉会長)
基調講演「新しい日本の創造:母国再生のための物語について」:松岡正剛(編集工学研究所所長/イシス編集学校校長)
「クリエイティブプロセスの未来」:スプツニ子(アーティスト/ミュージシャン)/中村拓志(建築家)/西田善太(雑誌編集者/ブルータス編集長)/茂木健一郎(脳科学者)/伊藤直樹(PARTYクリエイティブディレクター)

●第2部「世界のクリエイティブ・ハブとの連携に向けて」

「世界のクリエイティブ・ハブ戦略」:エドモンド・チャン(シンガポール ナショナル・アーツカウンシル会長、ウィンタイホールディングス副会長)/マイケル・リンチ(香港西九龍文化地区最高経営責任者)/今村有策(東京都参与/トーキョーワンダーサイト館長)

●第3部「クリエイティビティが提案する新たな社会」

「クリエイティビティが未来をつくる」:マニッシュ・アローラ(ファッション・デザイナー)/猪子寿之(チームラボ代表)/金田充弘(建築構造エンジニア)/ナダ・デブス(家具デザイナー)/中村政人(アーティスト/東京藝術大学准教授/3331 Arts chiyoda統括ディレクター)/原研哉(デザイナー)/松嶋啓介(Restaurant-I 総料理長)/マ・ヤンソン(建築家)/水口哲也(クリエイター/プロデューサー)/南條史生(森美術館館長/CREATIVE TOKYOフォーラム議長)

 

TOKYO AUTUMN/SPRING

東京の秋を盛り上げるクリエイティブイベントのプラットフォームで、街が一体となって東京の魅力を世界に発信し、街や消費を活性化させ、観光客誘致につなげることを目的とする。コンテンツ、ファッション、デザイン、アート、食など、あらゆるイベントの情報を特設サイトを通じて発信し、広報連携などを行なっていく。

~「TOKYO AUTUMN」に参画の主なイベント~

●TOKYO DESIGNERS WEEK

2011年で26回目を数えた老舗イベント。国内外の企業やデザイナー、大使館、デザイン系の団体、ギャラリーらが一堂に集い、最新の情報を発信する。このイベント内で、ほぼ1日を使って「CREATIVE TOKYOフォーラム」を実施した。
公式サイト

●Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO

2005年よりスタートし、もともとはファッション業界内のB to Bイベントとして知られてきたが、2011年開催よりメルセデスベンツが冠についたと同時に、B to Cの企画も様々なかたちで行なわれ、従来の産業支援という側面に加え、ファッション文化促進という要素も色濃くなった。メルセデスベンツのバックアップは、世界的なスポーツ選手のマネジメントなどで有名なIMGのサポートが大きく、その関係でこのイベント自体も国際化が進んでいる。春開催は2012年3月18日(日)~3月23日(金)で決定している。
公式サイト

●第42回 東京モーターショー2011

24年ぶりに東京に復帰した同イベント。各社の最新モデルの展示もさることながら、クルマやそれを取り巻く環境が、将来的に社会とどのようにつき合っていくのかを総合的に提案した主催者展示「Smart Mobilitiy City」も大きな反響を呼んだ。
公式サイトイベントレポート

●東京ラーメンショー2011

ファッションやデザイン系のコンテンツが多い「TOKYO AUTUMN」にあって、食を前面に押し出したイベントが「東京ラーメンショー」。“国民食”であるラーメンを通じた観光誘致という性格も持つ本イベントは、東北からの出展者を意識的に募り、東京のラーメンファンへのアピールの場とした。
公式サイトイベントレポート

 

~「TOKYO SPRING」に参画の主なイベント~

●TOKYO PREMIUM Project

関東、関西エリアのプレミアムレストランの食事をリーズナブルな価格で楽しめる「ジャパン・レストラン・ウィーク2012」、「TOKYO AUTUMN」にも参画した「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/W」、国内外160以上のギャラリーが参加する、アート作品の展示・販売イベント「アートフェア東京」という3つのイベントの運営母体が連携。レストランでのアート展示やファッションとアートの融合といった、それぞれがクロスするかたちでイベントを実施するという初の試み。
参考サイト

●GINZA FASHION WEEK

銀座に「松屋」と「三越」が開業以来、初の共同イベントを実施したことで話題になったのが2011年の10月。今回はそれに続く2回目のイベントとなる。テーマは「JAPAN-DENIM」。日本製のデニムを使った多彩な商品を、両店が総力を挙げて紹介していく。共同開発商品あり、対決企画ありと、興味深い内容が準備されている。
参考サイト

●六本木アートナイト2012

2011年は震災の影響で中止となってしまったため、2年越しの開催となる。前回メインアーティストとなるはずだった草間彌生さんがそのままスライドするかたちで目玉に。アート作品のみならず、デザイン、音楽、映像、演劇、舞踏など、多様な作品が混在しながら、六本木全体が非日常的空間となっていく。
公式サイト

●つくることが生きること 東日本大震災復興支援プロジェクト展

アートセンター「3331 Arts Chiyoda」が経済産業省クリエイティブ産業課の協力のもと、東北震災復興支援のためのクリエイティブ・プロジェクト「わわプロジェクト」を発足。震災から1年となる3月に、被災地を舞台に活躍するアーティストらの作品などを紹介する展覧会を開催。震災から学んだことをあらためて振り返り、これからの日本のあり方を再認識する。
公式サイト

イベント同士の連携で、東京をアジアの“クリエイティブハブ”に 「CREATIVE TOKYO」

昨年秋に続いて今春の「TOKYO SPRING」にも参画する「Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO」 写真=ⒸJapan Fashion Week Organization

イベント同士の連携で、東京をアジアの“クリエイティブハブ”に 「CREATIVE TOKYO」

2月の「TOKYO SPRING」記者発表会では、参画イベント主催者が集まってのトークセッションを実施。それぞれがどのような思いで参画するのか、今後どうあるべきかなどの意見が出た