今年の3月11日から有楽町や川崎など東京近郊で展開している「3.11ずっと忘れないプロジェクト100」をご存知だろうか。東日本大震災を忘れない・風化させないため、東北6県の地元商品（主に食品）を集めて直売会を開催し、東北の生産者や販売者に利益を還元、また被災地の雇用確保にもつなげようと活動しているプロジェクトだ。この直売会が5月9日（水）～11日（金）にTIC TOKYO（東京都千代田区）で開催された。
東京駅の丸の内口に隣接する屋外スペースでは、青森県産の黒にんにく、生のむかご、りんごや、福島県で手づくりされたかりんとう饅頭・豆乳入りの蒸しパンなど、東北6県の特産品や手づくり品などが並べられ、観光客やビジネスマン、OLなど多くの通行人が足を止める姿が見られた。お店で接客しているのはすべて東北出身のスタッフたち。今年高校を卒業したばかりの女性、職場が流されてしまい職を失った男性など、さまざまな人々が集まり販売に当たっている。
販路の開拓と雇用の確保で復興へつなぐ
「復興のためには継続した取組みが必要」とは誰もが言うところだが、経済的にも大きなダメージを受けた被災地のため、安定的な収入源を生み出そうと具体的に取り組むのは、民間企業にはなかなかできないこと。とくにイベント業界では、“継続させる”ということ自体が難しい。そんな中、定期的に直売会を行なう場所を3年間で100か所確保する、被災地の人の継続的な雇用を3年間で100人分確保する、という2つの大きな目標をかかげているのがこのプロジェクトの特長だ。指揮をとるのは震災直後から被災地のために活動を続けている阿部高志氏（東北産直協議会会長）。「イベントを少しやってすぐ終わりでは意味がない。安定的に、それこそ10年も20年も続けていかなくては」と、現在も駅や空港、観光・商業施設、イベント等々にアプローチをし、安定した販路の開拓と“ずっと忘れない”啓発活動のために日々奔走している。「まずは軌道にのるまで3年頑張る。それまでは休みません」（阿部氏）。
青森県出身の阿部さんはもともと都内の店舗やイベントで青森県の特産品を売る仕事をしていた。ところが周知のとおり、3.11以降、東北地方では全体的に観光客が激減し、風評被害も加わってものが売れなくなってしまった。困った生産者や道の駅などからの依頼を受けて既存店舗の軒先で野菜を売ることから始まり、今では平日は5～6か所、土日は10か所くらいの出店先で、東北6県から届く食品を販売している。大きなきっかけは二本松市の生産者の家に出向いたとき。「生活がなりたたない」という困り果てた声に直面し、「青森県だとか、被災地だとかは今は関係ない。東北6県の生産者や道の駅がみんなで協力しなければ」と奮い立った。店の看板を早晩「青森産直市場」から「がんばろう東北」に変えて、東北6県のアンテナショップとして、復興支援の大きな原動力となるべく“本当にお薦めしたい”地元商品を販売している。
一方、TIC TOKYOの会場を提供している森観光トラスト（株）は「東日本大震災 復興支援プロジェクトvol.2」と銘打って今月からこの直売会を誘致。自分たちにできることをしたいと、来年3月まで毎月、会場費の2日間分を無料提供するほか、人脈や立地のよさを生かしてイベント告知にも全面協力をしている。阿部さんにとっては強力なエールだ。2者の出会いはイベント会場。出店場所を探していた阿部さんと出店者を探していたTIC TOKYOの担当者との間ですぐに話は進み、1か月で開催に至った。
期間を気にせずさまざまなイベントに呼んでほしい
東北産直協議会ではプロジェクト遂行のため、今後もイベントへの出店を増やしていく予定。都内に10棟前後のアパートを借り上げているため、被災地と東京を行ったり来たりしているスタッフが常時10～20人はいる。「みなさんイベントをやられる方は、東北から人を呼ぶには短期間では無理ではないかと心配されますが、期間を気にせずさまざまな場やイベントに呼んでほしい」（阿部氏）とのことだ。
震災から1年たって、出店の声がかかる機会は減ってきたそうだが、本当はこれからこそ増やしていきたい。といっても目的は“安定的な”販路拡大、そのためには出店場所の見極めも大切となる。現在は有楽町の銀座マルシェ（交通会館）、六本木ヒルズマルシェ（六本木アークヒルズ）などを中心に出店し、今回スタートしたTIC TOKYO（丸の内トラストタワー）をきっかけに丸の内を情報発信基地にしようと計画中だが、今後は東京ゲートブリッジなど、都内の観光スポットにも注目して出店場所を広げていきたいとしている。問い合わせは東北産直協議会017-752-0209（事務局）。
（2012年5月11日（金）大塚泰子）
【TIC TOKYOでの次回開催予定】
日程：6月11日（月）～6月13日（水） 10：00～18：30
場所：TIC TOKYO 屋外イベントスペース
※7月は隣接するロビーでのランチタイムコンサートとも「東北」を前面に出したタイアップを検討中。
【関連リンク】
がんばろう東北 http://ganbaroutohoku.com/
TIC TOKYO http://www.tictokyo.jp/
