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コラム・特集

世界トライアスロンシリーズ横浜大会と トライアスロン界の取り組み

世界トライアスロンシリーズ横浜大会と トライアスロン界の取り組み

横浜大会は山下公園やその周辺の名所をひと通り巡るコース設定となっている

 

■横浜大会で国内初の「ISO20121」取得をめざす

水泳+自転車ロードレース+ランニング。アスリートの総合的な力を競うという意味では他に類を見ない競技であるいっぽう、非常にバランスの取れた有酸素スポーツということで、一般の愛好家も現在急激に増えているトライアスロン。その世界大会が9月29日(土)・30日(日)に横浜の山下公園およびみなとみらい地区で開催される。

 

これは1シーズンを通じて世界中を転戦するワールドシリーズの1つで、世界中から一流アスリートが来日、覇権を争う。ロンドン五輪直後ということで、新しい力の台頭にも期待できそうだ。

「4年後のリオ五輪に向けてのスタートとなる大会。ロンドン五輪に出られず悔しい思いをした選手も出ますし、新しい選手の出現にも注目です。見どころの多い大会になるでしょう」((公社)日本トライアスロン連合 専務理事 大塚眞一郎氏・以下同)

横浜でこの大会が開かれるようになって今年で3回目だが、地元ではすっかり定着。昨年は2日間で約27万人が沿道を埋め尽くし、選手たちに熱い声援を送った。ボランティアも非常に多く、欧米のスポーツイベントのように街が一体となってこの大会を盛り上げている。

世界トライアスロンシリーズ横浜大会と トライアスロン界の取り組み

沿道には毎回非常に多くの人が応援に駆け付ける。すでに横浜の新名物といっても過言ではない

さて、どの国の選手がどのようなパフォーマンスを披露するかという競技そのものも気になるが、イベント業界として注目したいのが、この大会が「ISO20121」(※)の審査対象であるということ。もし承認されれば、スポーツイベントのみならず、あらゆるイベントを通じて日本で最初のケースとなる(世界ではロンドン五輪が最初)。

もともとは横浜市(林文子市長)が強く推し進めたのがきっかけだったというが、
「取得のためには競技者たちも意識しなければならないので、我々も趣旨に全面協力しています」
ということで、行政と日本トライアスロン連合(以下JTU)が一体となった取り組みとなっている。単一の競技に対して行政のこうしたアプローチは珍しく、横浜市がいかにこの世界トライアスロンシリーズ横浜大会を重視しているかがわかる。

 

■環境対策として日本トライアスロン連合が取り組む「グリーントライアスロン」

このISO20121が承認されるのに重要な柱が3つある。「環境」「社会性」「経済性」だ。とりわけ第1項目にあげられた「環境」対策については、JTUとしても積極的な取り組みをみせている。

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「グリーントライアスロン」では、トライアスロンで使う海や陸の清掃をボランティア中心で行なう(写真提供:2012世界トライアスロンシリーズ横浜大会事務局)

「グリーントライアスロン」(Green Triathlon)と名付けられた取り組みは、ブース展開で趣旨をPRしたほか、会場となる山下公園の清掃を、本番1か月前にボランティアが中心となって実施。スイム会場となる山下公園前の海底清掃、同公園の清掃など大々的に行なった。また、横浜以外にも館山、昭和記念公園、高松、お台場でもこの「グリーントライアスロン」を実施。年間を通じて全国でメッセージを発信している。

「トライアスロンというスポーツは体育館の中でやるものでも、スタジアムでやるものでもありません。自然を一番使う競技、それがトライアスロンです。泳がせていただいている海をきれいにしよう、走らせていただいている陸をきれいにしよう、というのが我々が最も発信したいメッセージです」

世界トライアスロンシリーズ横浜大会と トライアスロン界の取り組み

横浜港の海を泳ぐ選手たち。このこと自体がすでに海がきれいであることのアピールとなっている

 

■ライト層の掘り起こしも積極的に展開

さて、こうした社会に対するアクションやエリート選手の育成のほか、トライアスロンという競技自体の普及もスポーツの統括団体の重要な活動のひとつである。JTUも様々なかたちで普及・PR活動を行なっているが、ユニークな取り組みのひとつに「トラ博」(トライアスロン総合博覧会)がある(主催はトライアスロン総合博覧会実行委員会で、JTUは後援)。

これは、トライアスロンに興味はあるが、まだやったことがない、どうすればいいかわからないといった人たちに、用具は何をそろえればいいのか、練習はどうすればいいのか、体のケア、大会へのエントリーの方法などを教えるというもの。会場も、ワーカーの多い青山、六本木という場所を選んだ。今年で3回目という取り組みだ。

「この『トラ博』を実施することで、例えば用具メーカーさんにも、従来のマニア相手のセールス以外に、初心者をターゲットとしたマーケティングをやってもらえるというメリットがあります。そうしたなかで我々がやったことはスターターキットを作ったこと。自転車、ヘルメット、ウェットスーツ、それに無料講習が1回分ついて98,000円という初心者向けセットが約500セット売れました。売る場所もショップではなく通販サイト『ディノス』での販売に挑戦しました。つまり女性をメインターゲットにしたということです」

約10万円するスターターキットがこれだけ売れたということで、いかに潜在需要が多いかがわかる。その掘り起こしにこの「トラ博」が果たした役割というのは非常に大きかったようだ。

「東京マラソン」の応募者数が30万人を超え、当選倍率がついに10倍以上になるなど、近年の健康ブームはもう“ブーム”とは呼べないほどすっかり定着した感がある。その流れで、トライアスロンにも急激な勢いで注目が集まっていると言えるのだ。

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トライアスロンに興味はあるがまだやったことがない、あるいは初心者だという人向けに開催されている「トラ博」(写真提供:トライアスロン総合博覧会実行委員会)

「『グリーントライアスロン』や『トラ博』、さらにその他普及・PR活動全般に言えることですが、国内にいる30万人の愛好者トライアスリート、さらにその周囲の人たちがどう感じ取って行動に移してもらえるか。そのきっかけ作りが我々の役割だと思っています」

9月の横浜大会では、過去最大数のEXPOブースが立ち並ぶとのこと。世界のトップアスリートのレースを見ながら、最新のトライアスロン用具を並べたブースや、地元横浜や東日本大震災被災地から出展の飲食ブースなどが数多く並ぶ。

「家族連れが遊びに来てもみんなで一緒に楽しめる。それがISOにもつながり、ひいてはスポーツ文化の形成にもつながる。我々がやろうとしていることのすべてが今度の横浜大会に凝縮されていると言ってもいいでしょう」

歴史が浅いこともあってこれまで日本では今ひとつ馴染みのなかったトライアスロンというスポーツを取り巻く状況は、着実に今、変わりつつあるようだ。
(9月11日(火) 鈴木隆文)

 

<ISO20121とは>
「イベントマネジメントの持続可能性に関する国際標準規格」。イベント運営における環境影響、経済的影響、社会的影響について管理することで、イベント産業の持続可能性をサポートするためのマネジメントシステム。
最初の例としてロンドン五輪ではすでにこの規格が適用されていて、もし「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」が認定機関より承認されれば国内では初のケースとなる。「環境」「社会性」「経済性」の3つの要素の目標値などを自らが設定し、認定機関より評価を受ける。

 

<ISO20121取得までのスケジュール>

6月 認証機関への
ISO20121の審査登録申請
審査対象や範囲の確定
7月~8月 第一段階審査 規格要求事項に沿った大会運営の
仕組みができているかの確認
9月
(大会当日も含む)
第二段階審査 大会当日も含め、第一段階審査で
確認した仕組みが効果的に実行さ
れているかなどの確認
大会終了後 審査登録証(認証書)の交付(予定)

 

 

<世界トライアスロンシリーズ横浜大会 大会概要>
【大会名称】2012世界トライアスロンシリーズ横浜大会
【日程】2012年9月29日(土):エリートの部
9月30日(日):エイジの部(オリンピックディスタンス・スプリントディスタンス)、リレーの部、
パラトライアスロンの部
【会場】横浜市山下公園周辺特設会場(山下公園スタート・フィニッシュ)
【主催】国際トライアスロン連合/世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会(横浜市/(公社)日本トライアスロン連合/(株)日刊スポーツ新聞社/(公財)横浜市体育協会/他
【主管】神奈川県トライアスロン連合
【後援】環境省/観光庁/国土交通省/神奈川県/(公財)日本オリンピック委員会/(公財)日本体育協会/(公財)日本障害者スポーツ協会/横浜商工会議所/(社)神奈川経済同友会/(社)神奈川県経営者協会/(社)横浜銀行協会/横浜港運協会/(社)横浜港振興協会/(社)横浜青年会議所/(社)横浜貿易協会/ラジオ日本/FMヨコハマ/神奈川新聞社/NHK横浜放送局/(株)テレビ神奈川
【協賛】
グローバルスポンサー:
DEXTRO ENERGY/SAMSUNG/SUUNTO/SKINS/SPECIALIZED/OAKLEY/DB SCHENKER
メインスポンサー:ローソン/NTT東日本/サムスン電子ジャパン/日本サムスン/日清食品
シルバースポンサー:BMW/富士ゼロックス/日清オイリオ/コカ・コーラ セントラル ジャパン/キタムラ/セレスポ/JTB法人東京/ホテルモントレ横浜/イオン/ANA
横浜サポーター:岩崎学園/エバラ食品/川本工業/キリンビール/国際警備/JX日鉱日石エネルギー/JA横浜/SHIMANO/昭和大学/スポーツアシスト/スポーツクラブNAS/スリー ボンド/積水樹脂/TYR/2XU/東京ガス/ナイス/日本写真判定/日本バナナ輸入組合/ファンケル/古河電池/POMPADOUR/丸紅情報システムズ/ミツハシ/リスト/横浜岡田屋/横浜市水道局/横浜ソロプチミスト/横浜レンタル
横浜1口サポーター:朝日オフセット印刷/アジア共同設計コンサルタント/一幸電子工業/岩井の胡麻油/ウィングマリタイムサービス/エヌ・ケイ・テクノ/オリマツ/オールジャパンサービス/カナエル/神奈川県バス協会/神奈川県土地家屋調査士会/関東学院大学/関東港運/北川商事/キャロルファンデーション/協和海運係船部/工藤建設/グローバル横浜警備保障/警備業横浜協同組合/産業貿易センター/サンシン/JA横浜/シマモリ保険サービス/ジャパントータルサービス/湘南医療福祉専門学校/白鳥運輸/スクワッド/清康社/相鉄企業/大地産業/谷川商店/東京湾水先区水先人会/ナビオス横浜(横浜国際船員センター)/日本工営神奈川事務所/間組横浜営業所/フェアストーン/富士倉庫/ホテルニューグランド/マッシュ/水穂警備/三菱電機神奈川支社/みなとみらい二十一熱供給/村山商店/山田債権回収管理総合事務所/郵便局 南関東支社/郵便事業 南関東支社/ゆうちょ銀行南関東エリア本部/横浜ウオーター/横浜清港会/横浜新都市ホール/横浜市老人クラブ連合会/横浜スタジアム/横浜トヨペット/横浜ポルタラインナップ
助成団体:(独)日本スポーツ振興センター/(公財)ミズノスポーツ振興財団/よこはまスポーツ振興基金

<グリーントライアスロン概要>
■館山
【日程】2012年4月7日(土)~4月8日(日)
【会場】JR館山駅西口特設会場

■横浜
【日程】2012年8月25日(土)
【会場】山下公園前面海域及び山下公園氷川丸側バルコニー

■立川
【日程】2012年9月8日(土)~9月9日(日)
【会場】昭和記念公園

■高松
【日程】2012年9月15日(土)
【会場】香川県高松市サンポートエリアの海と市街地

■お台場
【日程】2012年11月11日(日)
【会場】東京都港区お台場海浜公園

<2012 トライアスロン総合博覧会 概要>
【日程】2012年2月8日(水)~5月6日(日)
【会場】六本木会場:東京ミッドタウン プラザ1F「サイクルスタジオ・シルバーリンクPRO」内
青山会場:スタジアムプレイス青山
【主催】トライアスロン総合博覧会実行委員会
【後援】(公社)日本トライアスロン連合
【協力】シルバーリングPRO