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東京オリパラの文化プログラムについて文化庁が基本構想を発表、そしてあと5年 2015年7月21日

文化庁では、この7月17日、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催時に行われる文化プログラムの実施に向けた基本構想を発表した。
文化プログラムの実施に向けた文化庁の基本構想についてはこちらから。

 

文化プログラムとオリンピック憲章

既にご存知のように、オリンピック・パラリンピックの開催についてはスポーツ競技の実施だけではなく、文化的な催しも求められている。オリンピック憲章(※1)では以下のような記述がある。

OCOG(組織委員会) は少なくともオリンピック村の開村から閉村までの期間、文化イベントのプログラムを催すものとする。当該プログラムはIOC 理事会に提出し、事前に承認を得なければならない。

 

ロンドン大会の文化プログラム

2012年のロンドン大会においては2008年から2012年の間に、競技の主会場であるロンドン以外も含めての英国全土の1000以上の開催地において、英国の音楽や演劇、ダンス、美術、映画、フアッション等を紹介するイベントが約18万件開催され、参加者は延べ4300万人にものぼった。これらの催しは「カルチュラルオリンピアード」と総称された。特に開催年の2012年は「ロンドン2012フェスティバル」と称され、同年のオリンピック開幕前の6月からパラリンピック閉幕の9月まで12週間に渡り開催されている。
この期間中は33631件の文化イベントが実施され、参加アーティストは204カ国から25000人以上が参加、このロンドン2012フェスティバルへの外国人の参加は約13万とされている。英国人については一泊以上した観光客は約34万人、日帰り観光客は約300万人であった。(※2)国内外の人口が大きく交流した文化プログラムについて、英国の様々な面に影響を与えたと推測できる。
「カルチュラルオリンピアード」と「ロンドン2012フェスティバル」の概要についてはこちらから。(英語)

 

文化庁の基本構想

この文化プログラムについて、文化庁が東京オリンピック・パラリンピックに向けて取り組む基本構想が発表された。文化庁では、「文化芸術立国」(※3)の実現を目指し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機とする文化プログラムを組織委員会等と連携しながら、全国展開を通じて、全国津々浦々で、芸術家、文化芸術団体、NPO、企業、住民、地方公共団体、国等のあらゆる主体が文化に参加できる枠組みを作って取り組んでいく。
この基本構想の詳細はこちらから。

この発表によると、文化庁が取り組む文化プログラムは「文化力プロジェクト(仮称)」(名称は公募予定)として、この実施についての数値目標は次のように設定し、2020年までの訪日外国旅行者数2000万人の達成に貢献するとしている。

★文化力プロジェクト(仮称)の目標

イベント数 20万件
参加アーチスト数 5万人
参加人員 5000万人

★当面のスケジュール

2015年 9月頃 実行チーム準備室の設置 

「文化力プロジェクト(仮称)」の名称、ロゴなどの募集

「文化芸術アソシエイト(仮称)」の認定

「文化力プロジェクト(仮称)」の認定事務の担い手の公募 等

2016年 リオ五輪後 「文化力プロジェクト(仮称)」スタート
2016年 秋 「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」を開催、以降開催される文化プログラムのキックオフ・イベントとする。 

※文部科学省により経済界、地方公共団体等の協力による。

なお、東京都では、今年3月に「東京文化ビジョン」を策定している。
「東京文化ビジョン」についてはこちらから。


そして2020年7月24日(金曜日)まで、あと5年

東京オリンピック・パラリンピックまで、いよいよあと5年に迫った。偶然にも今年は曜日の並びが2020年と同じである。

この開会式が行われるのが、2020年7月24日は金曜日、20時から23時の予定である。会場はもちろん新国立競技場である。(※立候補ファィルによる)
1964年の東京大会は晴天の、まさに秋晴れの下で行われた開会式は今回は真夏の夜の実施となり、多少暑苦しいかも知れないが様々な映像演出等が期待されるところである。

一方東京以外の日本各地では、このタイミングに何が行われているか。
この時期は様々な強力なコンテンツである伝統的なお祭りや夏休みを狙った各種イベントが目白押しである。

札幌では、毎年恒例の音楽イベントが2本立てで開催中である。一つはサッポロシティジャズ(2015年は7/9~7/31)、もう一つはパシフィックミュージックフェスティバル(2015年は7/12~8/4)である。
東北の福島では、国指定の重要無形民俗文化財の相馬野馬追が開催。7月25、26、27日(毎年7月最終土日月)に開催。なおご存知のように、8月に入ると一週目に東北は七夕(8月7日)前後でお祭りラッシュとなる。
名古屋では、大相撲名古屋場所がまさに佳境となっており、26日は千秋楽である。(2020年は7月12~26日予定)
関西では、京都で一ヶ月に渡り行われている祇園祭の後祭山鉾巡行が7月24日に、大阪で日本の三大祭りの一つといわれる大阪の天神祭りは7月24日25日に開催、それぞれ賑わいを魅せる。
もちろんこれはほんの一握りを記したものであり、この時期は各地で花火大会をはじめとして様々なお祭りやイベントが開催されている。(各お祭り、イベントの日程は現時点での予定であり、今後変更がある可能性もあります)

今回の文化庁の発表によりやっと具体的に見え始めた文化プログラムと、強力な集客コンテンツである既存のお祭りやイベント等と合わせて、とかく東京(首都圏)の話題が多いこの東京オリンピック・パラリンピック開催であるが、地域が何かコトを、活性化を起こすための絶好の機会でもあるはずである。それは地域の自治体や企業と、イベントビジネスをする企業にとっても同じである。増加する訪日外国人観光客については、この年に首都圏から溢れることが予想され、競技の観戦だけでなくむしろ日本文化の体験を楽しみにしているという調査もある。その受け皿は、東京(首都圏)だけでなく日本各地域で作ることができるのである。首都圏を窓口・ショーケースとして利用して自分の地域に呼び込む、あるいは共通のテーマで多くの地域と連携関係を構築して、外国人観光客に国内各地を巡ってもらう。この時だけ、この場所だけの一過性で終わらせない、広い視野での活性化の取り組みが各地域に求められるであろう。

※1 オリンピック憲章2014年版 公益財団法人日本オリンピック委員会の公式ホームページより。

※2 「レポート 【未来を創造する】 ~2020年から未来へ、文化で繋ぐ~ 」 British Council
「平成26年版観光白書 第Ⅱ部 観光とオリンピック・パラリンピック」
ニッセイ基礎研レポート 2012-09-05「文化の祭典、ロンドンオリンピック東京オリンピック2020に向けて」
ニッセイ基礎研究所 社会研究部門 主席研究員 吉本光宏

※3 2014年3月に文化庁が、「文化芸術立国中期プラン~2020年に日本が、「世界の文化芸術の交流のハブ」となる~」を発表。「第1章 基本的構想」で考え方と2020年末段階で目指すべき成果を示し、続く「第2章 2020年までの基盤整備」で、その内容を、「人をつくる」、「地域を元気にする」、「世界の文化交流のハブとなる」、「施設・組織、制度の整備」の4分野にわけて示している。