「なつおせち」、この夏、イオンリテールが展開している商品であるが、妙にインパクトがある。
イオンリテール株式会社は、帰省時期に家族が集うお盆時期に狙いを定めた「なつおせち」の販売を始めている。6月24日より本州・四国の「イオン」「イオンスタイル」381店舗で予約承りを開始し、お盆の帰省に合わせた8月13日(土)~15日(月)に店頭でお渡しするというもの。
正月に家族でおせちを囲んで会食をするシーンが、夏の帰省時期にも同じように起こりうるという想定で、そのマーケットを新しく啓蒙、開拓していこうというもの。
しかし、「夏」に、お正月とイコールのイメージがある「お節」である。
意表を突いた組み合わせではあるが、そんなにおかしなことではなさそうである。
お節料理を多く扱う㈱紀文のホームページの中に、江戸東京博物館館長の竹内誠氏のコメントとして、「お節というのは、正月には限らず、年中行事の行われる日、多くは季節の変わり目の行事をさし、節日、物日ともいいます。しかし同時に、節の日に作るご馳走やお供え餅もお節といいました。また、それを振舞うことをお節振舞といいます。つまり、二つの意味があるのです」、さらに「節の日には、元日(1月1日)、人日(1月7日)、上巳(3月3日)、端午(5月5日)、七夕(7月7日)、重陽(9月9日)、煤掃き(12月13日)がある」とのこと。
国内の一般消費全般が飽和状態にある現在では、このようにあらたな“きっかけ“やイベントをしかけて消費喚起を呼び込むことは必須である。
最近では、ここ10数年で盛り上がりを見せている「ハロウィン」がその良い例であろう。
各調査によるとハロウィンの市場規模はクリスマス市場規模を超えたという調査結果も出ている。さらに、このハロウィンの後をイースターが追いかけ始めているようだ。
また、節分に恵方に向かって恵方巻きを食べる、という行為も以前には無かった文化だが、近年はかなり定着している感がある。ちなみにこの「節分」というものは、各季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日のこと。江戸時代以降は特に立春(毎年2月4日ごろ)の前日を指す場合が多くなっているが、この昔ながらの考えに従えばあと3回、一年の中で恵方巻を食べるタイミングがあることになる。事実、セブンイレブンでは「夏の恵方巻」を打ち出している。
今年の「なつおせち」は“おせち”という言葉を大胆に使っているところがポイントで、新しい認識を提案する場合はワンワードでイメージ伝わる手法が重要であり、「なつおせち」は良いネーミングであろう。
今後、「なつおせち」の市場推移を注視するとともに、あらたなマーケットの提案が出てくることにも注目である。
イオンの「なつおせち」についての詳細はこちらから。