「明日への扉」は、企画・制作・出演・技術スタッフ、さらには運営までをすべて学生が行なっているミュージカル。財団法人骨髄移植推進財団と夏目雅子・田中好子ひまわり基金の後援、厚生労働省の推薦のもと、滋慶学園グループの学生達が1994年から110回超の公演を重ね、今にいたっている。骨髄ドナー登録者の不足に問題意識を抱いた学生が始めたもので、ミュージカルスターを目指す主人公と、慢性骨髄性白血病に冒されてしまったライバルとのストーリーを青春群像という形で描いた作品だ。
今年は9月から10月にかけ、大阪と東京で公演があった。舞台上に出演する学生たちはもとより、舞台の進行に合わせて生演奏を行なうビッグバンドの演奏、ヘアメイク、美術、衣装、音響、映像、舞台制作までを滋慶学園グループの学生が担当。それ以外にも企画運営など舞台上現れないことも学生スタッフが行なっており、イベント業界側としても興味深い事例といえる。学生にとっては骨髄ドナー登録者の不足を世に伝え登録者数を増やす啓発運動を担うと同時に、日ごろの鍛錬の成果を発揮し能力をアピールする大きなチャンス。さらにパンフレットのクレジット表記を見るとわかるように、技術の指導や運営アドバイザーにはプロの企業が参加しており、この点も学生にとっての大きなプラスとなることだろう。
運営アドバイザー指導として参加した(株)ペッププランニングの嶋本照彦氏によると、毎年、音楽&エンターテイメント業界へのデビュー、就職を目標に入学してきた1年生たちが、僅か半年の期間でこのミュージカルを作り上げているとのこと。入学間もない10代の学生たちが、ミュージカルのストーリーと同じようにオーディションに集い、リハーサルを繰り返し、あるいは担当する役割において様々な問題と格闘して本番に臨んでいる。「企画コースの学生たちはパブリシティ要請やチケット販売の為、多くの電話を掛け、また企業の協賛獲得にも走りました。そんな努力の集大成である本番を終えた学生たちは、皆そろって、大きな成長を遂げたことと思います」(嶋本氏)。
会場では募金やチャリティ販売の呼びかけなども学生によってとても熱心に行われており、終演後は関わった全学生が舞台上に登場して会場から喝采が送られるなど感動的なフィナーレになった。夏目雅子・田中好子ひまわり基金から代表として登場した小達一雄氏も学生に賛辞と感謝を送ったほか、観客に向け改めて骨髄移植への理解とドナー登録への協力を呼びかけた。
最終的に今年は大阪・東京合わせ4,670人の来場者と1,294,940円の寄付が集まるという結果に。8年目の取り組みは着実に定着をし、実を結び続けているようだ。ただ、舞台制作を行った代表の学生の言葉の中にもあったように、「ドナー30万人」という目標を達成したあとも、その数を一定に保つのにまだまだ努力が必要となり、必要とされるドナーの数も今後増えていくことが予想される。上記の30万人突破は2009年度の公演で達成されたということだが、来年以降も学生の取り組みは続いていく。
(2011年12月14日(水)大塚泰子)
骨髄移植推進キャンペーンミュージカル「明日への扉」東京公演 概要
日程:2011年10月13日(木)・14日(金)
時間:開場17:30/開演18:00/終了21:00(予定)
開場:メルパルクホール(東京都港区)
入場料:前売り5,000円/当日6,000円(税込・一般)
主催・制作・運営:東京スクールオブミュージック専門学校/東京スクールオブミュージック専門学校渋谷/13フィルムセンター映画・俳優専門学校/東京ダンス&アクターズ専門学校
後援:財団法人骨髄移植推進財団/夏目雅子・田中好子ひまわり基金
推薦:厚生労働省
協力:東京コミュニケーションアート専門学校/仙台コミュニケーションアート専門学校/東京アニメ声優専門学校/東京デザインテクノロジー専門学校
協賛:公益財団法人オリックス財団/株式会社学生情報センター/大塚製薬株式会社
問い合わせ
明日への扉 東京公演事務局
TEL:03-5766-5190
URL:http://www.asuenotobira.jp