キャンドル2,000個で作った、イタリア直輸入のアート作品
ステラ フォレスターレ
西武園ゆうえんちでは、2010年-2011年シーズンより園内での大規模なイルミネーション「スターキングダム」を実施。2011年-2012年シーズンはさらに大々的になり(使用LED電球を100万球から165万球に増量)、引き続き好評を博している。
イルミネーションそのものの規模もさることながら、会期が非常に長いのも特徴で、2011年11月から始まり、2012年4月まで、のべおよそ4か月にわたって開催される(途中1カ月の中断期間あり)。その間、関連イベントも様々なかたちで実施されているわけだが、会期前半の山場であるクリスマス時期に行なわれたのが、今回紹介する「ステラ フォレスターレ」だった。
これは、イタリアのシチリア島カルタジローネ市で毎年行なわれている「ラ・スカラ・イルミナータ」をモデルとしており、カルタジローネ市以外で行なわれるのは世界でもこの西武園ゆうえんちが初めての試み。後援で同市がクレジットされており、いわば本家の公認のもとでのイベントとなった。
「『ラ・スカラ・イルミナータ』は、直訳すれば”階段のイルミネーション”。現地ではロッソ家という一族が約50年間取り仕切り、それを街が支援するという格好となっています。私自身は2005年にこのお祭りの存在を知って、ぜひこれを日本でもやりたいと思い、少しづつ準備を進めて今回ついに実現に至りました」(ステラ フォレスターレプロデューサーで(株)インフィオラータ・アソシエイツ代表取締役・藤川靖彦氏)
藤川氏の(株)インフィオラータ・アソシエイツは、地面に花びらで絵を描く“花の絨毯”インフィオラータをプロデュースしてきた会社で、ちょうど10周年を迎えた2011年に、何か新しいことができないかということで始めたのがこの企画だった。
「インフィオラータ」は基本的にフラットな地面に描くものだが、「ステラ フォレスターレ」は階段をひとつのキャンバスに見立て、並べたキャンドルで絵を描くというもの。今回行なわれたのは3日間で、3日とも違うデザインとなった。
メインのイルミネーションである「スターキングダム」は大量のLEDを使った大変華々しいものだが、それとは対照的に、ろうそくの火ですべてを表現した「ステラ フォレスターレ」は大変温かみがあり、独特の魅力を持っている。環境配慮という点でもアピール度は高い。
ちなみにこのキャンドル、色を表現するために利用しているのはなんと“和紙”。カルタジローネではもちろん使われていないが、日本で再現するにあたり様々な実験を繰り返した結果、決定したのが、キャンドルホルダーに和紙を巻くという手法だった。見え方を考慮し、和紙の種類にもこだわっているという。
そして何よりこの企画のポイントは、参加型であるということ。本場の「ラ・スカラ・イルミナータ」同様、この「ステラ フォレスターレ」も、一般から募った実行委員5人と、デザインを担当した武蔵野美術大学14人が協力しあって作り上げたという。「現地では4,500本くらいのキャンドルを作りますが、市民が2,000人ほど階段に登って火を着ける作業を行ないます。今回、参加型で実施できるという点や、こうした企画を実施するのに最適な階段があったということも大きかったと思います」(藤川氏)
デザイン担当の学生は、かつて「Love is…」におけるコンテストでグランプリを取得したチーム。今回、同イベントにも関わるカメヤマキャンドルハウスからの紹介で、コラボレーションが実現した。
当日の作業のほか、企画段階から一般市民が参加
いっぽう、遊園地側も今回の企画には大きな思い入れがあったようだ。
「2010年3月に『say-seibu.jp』というサイトを立ち上げました。これは、お客様のご意見1つひとつを「所沢西武アッハの森」(※)の活性化につなげようということでスタートしたプロジェクトで、これまで6,000件以上のご意見を頂戴してきました。当然西武園ゆうえんちに関するご意見もあり、中には西武園ゆうえんちはもう古い、すっかり廃れてしまったなどの厳しいものも少なくありませんでした。しかしいっぽうで、愛着を持っている沿線住民の方々もたくさんいらっしゃるということを我々も強く感じ、どうにかして昔の勢いのあった頃に戻せないか、沿線エリアの方々にとって誇りを持っていただけるようなことができないかと考えていたところにこの企画をご提案いただき、ぜひということで今回実施に至りました。この西武園ゆうえんちでしか見られない風物詩となるよう、今後もしっかりと取り組んでいきたいと思っています」(西武鉄道(株)スマイル&スマイル部 杉山雅樹課長)
say-seibu.jpに登録した人を「WINメンバー」と呼んでいるが、その「WINメンバー」から夏のうちに5人を選抜し、冬のイルミ・イベント企画の実行委員会「ステラ フォレスターレプロジェクトメンバー」を立ち上げ、月2回ほどのミーティングを実施。それが今回の「ステラ フォレスターレ」実施の大きな原動力となった。
サイト上でのコミュニケーションのみならず、企画実現までリアルに会ってプロセスを共有することもイベント化してしまおうという試み。具体的には、「ステラ フォレスターレ」というネーミング、武蔵野美術大学の学生から提案されたデザインの選定、点灯作業を参加型にする際の段取り、点灯式に呼ぶミュージシャンの選定など、企画の根幹に関わる部分にもタッチし、主催者側と二人三脚でイベントを作り上げた。そしてこうした取り組みは、冬のイルミネーションだけにとどまらず、今後も続けていきたいとのことだった。
西武園ゆうえんちは都心から離れた立地条件ということもあって、企画の内容が特に問われる。こうした一般のユーザーが参加することで、よりニーズに合致し、また、プロにはない斬新な発想の企画が生まれる可能性が高くなったわけで、今後の展開に注目したい。
(2011年12月22日(木) 鈴木隆文)
※所沢西武アッハの森=西武園ゆうえんち、西武ドーム、狭山スキー場などを擁する、多摩湖や狭山湖に近い狭山丘陵の緑に囲まれたエリア(http://www.say-seibu.jp/ah_about.php)
<ステラ フォレスターレ概要>
タイトル | ステラ フォレスターレ~森にきらめく星たちの三重奏~ |
日程 | 2011年12月23日(金・祝)~12月25日(日) |
会場 | 西武園ゆうえんちウォーターシュート跡地階段 |
主催 | 西武鉄道(株) |
運営 | ステラ フォレスターレプロジェクトメンバー |
協賛 | 東京ガス(株) |
後援 | カルタジローネ市/イタリア大使館/イタリア政府観光局(ENIT) |
協力 | (株)インフィオラータ・アソシエイツ/カメヤマキャンドハウス |
来場者数 | 24,662人(3日間) |
告知宣伝 | 公式サイト、プレスリリースとそれに反応したメディアによる告知、西武鉄道での中吊り広告、沿線主要駅でのポスター掲示など |
協力スタッフ数 | 一般参加の企画メンバー5人、デザイン担当の武蔵野美術大学学生14人 |
仕様 | キャンドル数約2,000個、幅約4.5m、長さ約50m、全71段 |
<スターキングダム開催期間>
ファーストシーズン | 2011年11月12日(土)~2012年1月9日(月・祝) | 会期中毎日営業 |
セカンドシーズン | 1月14日(土)~2月12日(日)・14日(火) | 会期中毎週土・日および2月14日(火)のみ営業 |
サードシーズン | 3月24日(土)~4月8日(日) | 会期中毎日営業 |