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暴力団排除の流れにイベント業界は?JACEのシリーズセミナー第1弾

暴力団排除の流れを受けて、イベント業界はどう変わるのか。関係者にとっての大きな問題だが、その性質上、大々的に語られることは少なかったといえる。これを真正面から取り上げたのが、2011年の年末に開催されたJACE(社団法人日本イベント産業振興協会)主催のセミナー「JACEサロン」だ。“反社会的勢力とイベント”と題し、講師にリスクアナリストで「暴力団排除条例ガイドブック」を上梓したばかりの(株)エス・ピー・ネットワーク 芳賀恒人氏と、テイケイ(株)松田恒氏を迎え、全3回のシリーズセミナーの第1弾を開催した。当日の参加者は27人。

暴力団排除の流れにイベント業界は?JACEのシリーズセミナー第1弾

前半の講師は(株)エス・ピー・ネットワーク 総合研究室 芳賀恒人主任研究員。「暴力団をはじめとする反社会的勢力は、社会悪であって必要悪ではないとの認識が必要」など基本的な考え方を紹介

今日の反社の実態と企業に求められる態度とは

前半では芳賀氏により暴力団をはじめとする反社会的勢力(反社)排除の取り組みについて1時間強のポイント解説があった。芳賀氏の所属する(株)エス・ピー・ネットワーク(東京・杉並区)は警察OBで立ち上げたという経緯もあり、創業時からの理念として反社排除をかかげ、危機管理全般を取り扱う専門企業。反社に関する独自のデータベースを有し、多くの反社排除(関係の解消等)の実務もこなす、日本ではめずらしい会社だ。

この日は概論ということで、今日の反社の実態、各業界の動向、企業が気をつけるべき点、反社との関係を持たない・断ち切るための基本的な心構えなどを解説。その中では、反社に特徴的な行動様式や、この取引先は安全か?といったチェック方法、条例の解釈の仕方など、実質的な内容も多かった。

現在、政府や自治体による法の整備だけでなく、マスコミ報道による世論の形成もかなり進められており、また、金融・不動産といった反社排除に先進的な業界も存在するなど、これから企業として対策を進めていく上での心強い情報や事例も多く紹介されたが、一方で反社側の法対策も日進月歩ですすんでいること、また「復興利権に暴力団の影」という産経新聞からの引用が紹介された場面では、問題の根の深さも垣間見えた。

とはいえ、短い時間の中で「反社の定義」から「関係解消への取組み」といった全体のポイントと具体例が取り上げられていたおかげで、「実際にどう考え、どう動けばいいのか」というイメージがわきやすく、反社問題の初心者にも、また経験者にも、手ごたえある内容となっていたのではないだろうか。セミナーの主な構成は以下のとおり。

~反社会的勢力排除の取組みポイント~
(当日配布資料より)

1.反社会的勢力を巡る最近の動向
2.反社会的勢力の企業への侵入
3.反社会的勢力排除の内部統制システム
4.反社会的勢力の定義
5.反社チェックのポイント
6.関係解消への取組み
7.海外反社
8.統合的取引先管理

 

後半は松田氏による警備業務についてのセミナー。テイケイ株式会社(東京・新宿区)は多くの警備実績を有する業界大手の警備会社で、松田氏はそのイベント事業部に所属している。今回は「警備業法とイベント」と題し、警備業の歴史的な成り立ちや、警備を発注する際の基本的な注意事項を取り上げた。特に、イベント制作会社、運営会社、広告代理店などにも求められることがある「警備業法認定」について、またイベントに主に関わってくる“二号警備(雑踏警備・催事警備)”を含む警備の分類についての詳しい解説があった。今回の構成は以下の通り。

~警備業法とイベント~

1.警備業法のあゆみ
2.警備業法による警備業の認定について
3.警備業法とイベント
4.テイケイならではの特徴

暴力団排除の流れにイベント業界は?JACEのシリーズセミナー第1弾

後半はテイケイ(株) イベント事業部 営業課 松田恒課長が担当。次回は、「こういう案件ではどんな安全管理が必要になってくるか」など、事例や参加者からの質問を題材にケーススタディを展開する予定

きっかけは東京都と沖縄県の条例施行

JACEで今回のセミナーを担当している白枝氏によると、実施に至る経緯として大きかったのは、去年10月、47都道府県の中で最後まで暴力団排除条例がなかった東京都と沖縄県がともに「東京都暴力団排除条例」「沖縄県暴力団排除条例」を施行したこと。これを受けた形で11月には「朝まで生テレビ」(テレビ朝日系列)で「激論!暴力団排除条例と社会の安全」が放送されている。このようなタイミングでイベント業界としても指針を打ち出して行きたいと、今回のサロンを企画したということだ。「タイムリーなテーマをとりあげ、会員の皆様に有用な情報発信をしたい」(白枝氏)という言葉と、今回の満員御礼という結果のとおり、今後イベント業界としてもますます注目を集めていく問題となることだろう。

第2回となる次回は、実際のイベントで起きた事例等をもとに、具体的な対策を取り上げていく。参加者からの意見を集約し、それをもとに講義の内容を組み立てて行くため、かなり密度の濃い“実践編”が期待できそうだ。ちなみに今回の参加者からはすでに「実際に反社が来た場合の具体的な対処法を、過去事例をもとに教えてほしい」などという意見が集まっているという。日程については 2月下旬から3月初旬で調整中。

(2011年12月21日(木)大塚泰子)

 

<実施概要>
名称:JACEサロン『基礎編 反社会的勢力とイベント』
日程:2011年12月21日(水)
会場:JACE(東京都千代田区)
講師:芳賀恒人((株)エス・ピー・ネットワーク)
協力:テイケイ(旧・帝国警備保障(株))
定員:25名
参加費:無料(懇親会の参加者は参加費1,000円が必要)
問い合わせ先:JACE事務局 03-3238-7821
URL:http://www.jace.or.jp/