2011年3月、社団法人日本イベント産業振興協会(JACE)主催の「第6回 日本イベント大賞」表彰式が開催された。今年の大賞には、中越地震からの復興を地元から発信したイベント「信濃川プロジェクト2009」、準大賞には、オリジナリティ溢れるお化け屋敷企画の「ハイチュウ ホラーハウス」が選ばれた。信濃川プロジェクト2009ではその組織力、実行力、構想などが総合的に評価され、ハイチュウ ホラーハウスでは何より企画の面白さが評価された。作品により受賞理由はさまざまだったが、“従来の枠組みを越えた挑戦をしているイベント”を積極的に評価している同賞として、イベントの新しさ、ユニークさに光を当てていることは間違いない。
当日は合計10つの地域やジャンルの垣根を越えたイベントが表彰を受け、会場には各作品の主催者、制作者が集まることとなった。総合的なイベント表彰制度としては日本で唯一のものである同賞は昨年より「ノミネーター制度」を導入し、応募数や応募地域を拡大することに成功。今回はグローバル賞とクロスメディア賞という2つの審査員特別表彰を新設、毎回進化を重ねた運営を行なっている。
式では入選、審査員特別表彰、準大賞、大賞の順に表彰が行われ、合間には各受賞イベントの紹介VTRが上映された。見どころはなんといっても、主催者、そして普段あまり表舞台に出てこない制作者の生のコメントが聞ける点。また、受賞者の1人である愛知県庁の内藤氏からのコメントにあった「私たちの記憶に残るイベントになったのはもちろん、今回の賞を頂いたことで、公の記録にも残るものになった」という言葉もまた、この賞の意義を表しているのではないだろうか。式典後に予定されていた交流パーティーは東北関東大地震の発生により中止となってしまったが、会場内外で出席者による交流が見られるなど、イベントの「企画」という切り口でイベント関係者が集まる貴重な機会であることを改めて認識する場となっていた。
◆主催者に聞く
―今回、「グローバル賞」「クロスメディア賞」の2つを新設した狙いについて教えてください。
JACE 白枝庸介氏 入選作品の内、イベントによる国際交流に際立った実績をあげられた『PiKA PiKA AICHI Project』に「グローバル賞」を、また、ネットとリアルの場を融合させイベントの新たな領域の創出に功績のあった『楽天市場うまいもの大会』に「クロスメディア賞」を、審査員特別表彰のかたちで設けました。前者は、JACEが国内唯一の審議団体として国際策定参画している「イベント・サスティナビリティ・マネジメント・システム ISO20121」が今後発行され、我が国にも導入されることに鑑み、イベントの国際標準化の動きに注目頂くことを意図したものです。また後者は、移動体通信などIT技術によるバーチャルな世界が伸張する今において、リアルの“場ぢから”の重要性を再認識頂く必要性があったことによります。
―前回は他薦制度を取り入れ、今回は賞を新設と、毎回さまざまな進化を遂げておられますが、今回、ほかにあたらしい試みがありましたら教えてください。
JACE 白枝氏 初回から一昨年までは、JACE新年会に併せて本表彰式が行われていましたが、独立の方がよいとの多数意見で分離され、昨年からは表彰式のみ行われるようになりました。しかし、授与のみならず、受賞者と我々イベントの専門家との交流の場があった方が受賞者への労いと情報提供、また相互触発など、よりよい機会になるとの思いで、今年「交流会」と称した立食パーティーを設けました。
―今後取り入れたいアイデア、描いている理想像などはありますか?
JACE 白枝氏 取り入れたいアイデアとしては、まず「イベント業務管理者資格」の社会的認知と評価を支える為、受賞イベントに関与した有資格者を実名をあげて顕彰する方法を加えたいと思います。また、描いている理想像としては、日本の津々浦々から・あらゆるジャンルの・圧倒的多数の・応募を頂き、“「日本イベント大賞」の作品審査”が“イベントの時代評価と同義”となるまでに発展させたい。 さらには、日本発の創造語である『イベント』の文化的・経済的概念を世界共通のものとさせ、審査会・授賞式を常に日本で開催し、「カンヌ国際広告祭」と双璧をなす「世界イベント大賞」に進化・変貌させることを夢見ています。
◆第6回日本イベント大賞表彰式 開催概要
名称 | 第6回日本イベント大賞表彰式 |
開催日 | 2011年3月11日(金) |
会場 | 主婦会館 プラザエフ |
主催 | 社団法人日本イベント産業振興協会(JACE) |
制作・運営 | (株)ティー・ツー・クリエイティブ |
来場者数 | 103名 (取材プレス 4社) |
◆第6回日本イベント大賞について
応募作品 | 82作品(自薦、他薦) |
応募期間 | 2010年6月1日~10月15日
(2009年10月1日から2010年9月末日までに行なわれたイベントが対象) |
最終審査員 | 澤田裕二(株式会社SD代表取締役社長)
中澤圭介(株式会社宣伝会議 月刊「販促会議」編集長) 宮崎雅春(日本コンベンション事業協会 前理事) 宮本倫明(Landa Associates Ltd 代表) 望月照彦(多摩大学大学院 教授) ※敬称略・50音順 |
受賞作品数 | 大賞1
準大賞1 入選8 (うち「グローバル賞」1、「クロスメディア賞」1) |
主催 | 社団法人日本イベント産業振興協会(JACE) |
後援 | 経済産業省 |
協賛 | 株式会社ICSコンベンションデザイン
株式会社アサツー ディ・ケイ サクラインターナショナル株式会社 株式会社ジェイアール東日本企画 株式会社新東通信 株式会社大広 株式会社丹青社 株式会社テー・オー・ダブリュー 株式会社電通 株式会社電通テック 東京電力株式会社 株式会社乃村工藝社 株式会社博報堂 株式会社ビジョンテクノネット 株式会社フジヤ 株式会社ムラヤマ (50音順) |
◆今回の受賞作品
配布資料より抜粋(※くわしくは日本イベント大賞のウェブサイトへ)
【大賞】信濃川プロジェクト 2009
・主催者:信濃川プロジェクト 2009 実行委員会 ・制作者:信濃川プロジェクト 2009 実行委員会 ・イベント概要 中越地震 5 年目にあたり震災復興を地元資源の花火を使ってアピールするイベント。県境から新潟港までの信濃川155kmの間、10市町村延べ510か所の打ち上げ所を設置。市民と県外者含むボランティア総勢1,200名が上流から下流に向け 1 秒ごとに打ち上げ、わずか510秒(8分30秒)の花火に悲惨な震災の記憶と復興なった地域への思いを託した。 ・受賞理由 信濃川流域を活用した総延長 155km という「万里の長城」的スケール感の壮大なプロジェクトにもかかわらず、実行の担い手は一般市民や民間非営利団体(NPO)のメンバーであり、広域を連携させた組織力とやり遂げた実行力が称賛されるとともに、未来型地域イベントの構想、組織作り、実践手 法のモデルとなる。シンプルな構成により鎮魂と復興のメッセージが胸に迫る作品である。
|
【準大賞】ハイチュウ ホラーハウス
・制作者:株式会社博報堂 ・イベント概要:8月12日「ハイチュウの日」にラフォーレ原宿にハイチューがお化け屋敷をオープン。無事にくぐり抜けるとこのイベントのためだけに開発された誰も食べたことのない果汁100%ハイチューが全員に1粒ずつ提供された。最大4時間待ちの行列を作りながらも、4日間で3,200人以上が体験。限定商品の販売も行われた。 ・受賞理由:合理的な論理に基づいた企業イベントの系譜に、不条理とも思える意味性を超えたイベントの可能性に一石を投じた企画・実践が評価される。 |
【グローバル賞(審査員特別表彰)】PiKa PiKa AICHI Project
・主催者:愛知県 ・制作者:株式会社電通名鉄コミュニケーションズ |
【クロスメディア賞(審査員特別表彰)】楽天市場うまいもの大会
・主催者:楽天株式会社 ・制作者:楽天株式会社 |
【入選】世界一おしゃれな行列
・主催者:T’s 株式会社 ・制作者:株式会社博報堂 【入選】チャリティー手話ライブ D’LIVE ・主催者:株式会社コヤマドライビングスクール ・制作者:株式会社コヤマドライビングスクール 【入選】第36回野毛大道芸 ・主催者:野毛地区街づくり会 ・制作者:野毛大道芸実行委員会 【入選】コミュニティアートイベント「水と光、そして響き」 ・主催者:Water and Light project ・制作者:Water and Light project 【入選】東芝一般白熱電球製造中止式典 ・主催者:株式会社東芝 東芝ライテック株式会社 ・制作者:株式会社電通 株式会社電通テック 【入選】アロハヨコハマ 2010 ・主催者:アロハヨコハマ実行委員会 ・制作者:株式会社ペッププランニング |
*
もちろん、これら応募作・受賞作は各地で開催されている素晴らしいイベントのうちのごく一部といえる。だが、こうした場を設けて積極的に評価していく姿勢は、イベントの持つ価値やその幅広さを再認識させることにもつながる。今後も、業界を盛り上げていくひとつの大きな支点となっていくのではないだろうか。(2011年3月11日 大塚泰子)
*
<日本イベント大賞とは・・・?> 社団法人日本イベント産業振興協会(JACE)の15周年記念事業として2004に初実施。「あたらしいイベントやイベントによるビジネスのインキュベータとなること」を目指し、企業や地域のイベントの区別にかかわらず、“新しい技術やコンテンツの開発に寄与したイベント”や“新しい仕組みや領域への取り組みにより優れた成果を収めたイベント”、“あたらしい事業やビジネスとして実を結んだイベント”等を顕彰し、イベントの発展やイベントによる産業振興を図ることを目的としている。
<過去の大賞受賞作品>
|